Quantcast
Channel: ambassador @ young-germany.jp
Viewing all articles
Browse latest Browse all 235

「もう一度日本でしたいこと」(5)

$
0
0
気がつかないうちに定年退職の日が近づいているので、そろそろ用意しないといけないのだ。だから『大使日記』はこれから週末だけ普段の「日記」を書き、毎日「日記」の代わりに、「日本では何がよかったのですか」と時々聞かれることに、答えとして準備したことを少しずつ書きたいと思う。「もう一度日本でしたいこと」という。よろしくお願いします。


魚(2)

早朝かり出されるのには辟易しましたが、政治家の気持ちはよくわかります。とれたての新鮮な魚をどうしても食べたくなる気持ちです。まだ生きたままのを見せてくれ、その場でさばいたものを食べられるチャンスなど、そうたくさんはありません。お醤油を少したらし、わさびを少しだけつけて、口に運ぶと、まるでクリームのように舌の上でとろけるおいしさです。私はドイツの内陸部の出身で、小さい頃魚はあまり食べませんでした。新鮮な魚などありませんでしたし、生で食べるなど考えられませんでした。なぜ、そんな土地の遺伝子をもつ私のような人間が、この国で出される魚介類や海藻を心底おいしいと思えるのでしょうか?ひょっとしたら、子どもの頃、私の故郷の郷土料理で出される、やわらかな生の豚肉のとろけるような味が大好きだったからでしょうか?いつもとても驚かされるのですが、一流料理店だけでなく、例えば秋田であれ九州であれ片田舎の普通の店でこうした経験をできる国は日本以外にあるでしょうか?スシは世界中に知られるようになり人気が出ました。しかし、頑張っている世界中の料理人の方々の努力には敬意を表しますが、やはり食べる側の要求が相応に高くなければ、料理のクオリティも高くはなりません。実際、日本ほど、新鮮な魚を楽しむ舌がこれほどまでに発達している国はありません。味覚の贅沢。ですから、フランクフルトであれ、はたまたパリ、北京、カリフォルニアであれ、忘れて結構。日本のお寿司は今後何度でも食べる機会がほしいです。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 235

Trending Articles