気がつかないうちに定年退職の日が近づいているので、そろそろ用意しないといけないのだ。だから『大使日記』はこれから週末だけ普段の「日記」を書き、毎日「日記」の代わりに、「日本では何がよかったのですか」と時々聞かれることに、答えとして準備したことを少しずつ書きたいと思う。「もう一度日本でしたいこと」という。よろしくお願いします。
セミ
窓を開け放った和室。外には夏の始まりの湿気をたっぷりと含んだ緑が生い茂っています。小雨が降り、雨音がかすかに聞こえます。庭も室内も明るくはありません。時々風がそよぎ、障子をわずかにカタカタいわせています。そうした全ての音を掻き消す鳴き声がします。何百、何千とも知れぬセミが鳴いているのです。鳴き声は大きくなったり小さくなったりをゆるやかに繰り返しながら、部屋の両方向からまるで異次元の音のように入り込んできます。途切れることはありません。暑いので、冷やしたワインを一杯。日本の夏の音。そんなひとときをもう一度過ごしたいです。
セミ
窓を開け放った和室。外には夏の始まりの湿気をたっぷりと含んだ緑が生い茂っています。小雨が降り、雨音がかすかに聞こえます。庭も室内も明るくはありません。時々風がそよぎ、障子をわずかにカタカタいわせています。そうした全ての音を掻き消す鳴き声がします。何百、何千とも知れぬセミが鳴いているのです。鳴き声は大きくなったり小さくなったりをゆるやかに繰り返しながら、部屋の両方向からまるで異次元の音のように入り込んできます。途切れることはありません。暑いので、冷やしたワインを一杯。日本の夏の音。そんなひとときをもう一度過ごしたいです。