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Channel: ambassador @ young-germany.jp
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「もう一度日本でしたいこと」(3)

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気がつかないうちに定年退職の日が近づいているので、そろそろ用意しないといけないのだ。だから『大使日記』はこれから週末だけ普段の「日記」を書き、毎日「日記」の代わりに、「日本では何がよかったのですか」と時々聞かれることに、答えとして準備したことを少しずつ書きたいと思う。「もう一度日本でしたいこと」という。よろしくお願いします。


三角形の会話

ある日、妻と私がある山を下りているとき、ベンチがあり、休憩をとりました。そこに同じく下山中の、全身登山の装いの男性が二人通りかかりました。挨拶を交わしたあと、二人のうち一人が妻に話しかけてきました。妻は台湾出身で日本人と外見は変わりません。どちらからですか?あまり日本語を勉強していない妻でもこの質問には答えられました。しかし次の質問からは無理でした。「そのような靴で、あの上のほうの岩場はきつくありませんでしたか?」という質問に妻は分からないという顔で私のほうを向いたので、確かにきつかったが大丈夫だったと私の方から答えました。すると、その人はまた私の妻に向かって登山はよくするのか、時間があったら、次の峠のところで左に行くと、とてもいい竹林があり、すこしのぼりはきつい等々と話しかけてきました。妻が再び私のほうを向くので、代わって私のほうから、竹林の話は聞いているが今回はまだ行くところがあるので残念ながら時間がないと答えました。男性は、なるほどと言い、また妻のほうをむいて質問しました。
男性に答えていたのは、私ばかりで、私からもあちらに質問をしました。それでも、その人は私のほうではなく、外見が日本人に見える妻のほうを向いて話し続けました。外見が明らかに違う人間が日本語を話すということが見えていないのです。実に驚くべき、興味をそそられる面白い現象で、実はよくある現象です。短期間のアメリカ留学経験もある、日本でよく知られたある政治家ですらそうでした。その政治家は私たち夫妻との昼食の席で、話をあまり理解できない妻のほうばかりを向いて話していたのです。何度も繰り返される、どうしても避けられない喜劇的な状況。とても奇妙ですがとても興味深い現象で、何度でも遭遇してみたいと思っています。

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